2019年7月15、16両日に開催されたAmazonプライムデーは、昨年を大きく上回る盛況を見せました。
一方でWalmart(ウォルマート)やeBay(イーベイ)など、Amazonの競合も、Amazonプライムデーの開催時期に焦点を合わせて、大規模なセールを行うようになり、プライムデーと並んで「7月のブラックフライデー」と呼ばれる現象が出現しています。
ここでは2019年のAmazonプライムデーと「7月のブラックフライデー」を構成するWalmartなどの小売店の動きをご紹介します。
空前の活況を呈したAmazonプライムデー2019
年ごとに規模を拡大するAmazonプライムデーは、2018年には推定40億ドルを売り上げ、ブラックフライデー・サイバーマンデー(※感謝祭翌日から始まる11月末の大規模セール)の合計を上回りました。今年から2日間の開催となったAmazonプライムデー2019は、2018年の実績をさらに上回り、60億ドル近い売上を達成したと推計されています。しかし、他の小売業者もAmazonの動きを傍観していたわけではありません。
7月のプライムデーはAmazonの枠を超えて広がる
Amazonプライムデーは、Amazonに留まらず、アメリカの他の小売業者にも大きな影響を与えています。
デジタルマーケティング会社Adlucentの調査によると、アメリカの消費者の75%がAmazonプライムデーに買物をすると答えています。しかし、そのうちの68%は、Amazonだけでなく、アメリカの大手ディスカウントストアであるWalmartやTarget(ターゲット)、大型家電量販店のBestBuy(ベストバイ)など、他の小売業者のサイトも見て回る、と答えています。
事実、Walmartを始めとするさまざまな小売業者が、プライムデーと時期を合わせてセールを行う動きは、2015年のプライムデー開始当初より起こっており、そうした流れは「7月のブラックフライデー」と呼ばれるようになって、アメリカの消費者にも定着しつつあります。
2019年には、Targetはプライムデー当日にセールを開催し、Walmartはプライムデーの数日前から1週間に渡るセールを、Amazonの価格に対抗する形で行いました。
他を圧倒するAmazonプライムデー
こうした7月のブラックフライデーの動きはありつつも、この期間のAmazonプライムデーは、他を圧倒するものとなっています。2018年には、消費者の50%がAmazonプライムデーで買い物をすると答えたのに対し、7月のブラックフライデーで買い物をすると答えたのは21%にとどまっています。プライムデー期間中のすべての商取引の86%をAmazonが占め、2019年にはAmazonはWalmartとeBayの売上を合計した10倍以上の額の売上を計上しました。
しかし売上を着実に伸ばしているAmazonに歩調を合わせるかのように、Walmartを始め他の小売業者も、7月のブラックフライデー期の売上を年々伸ばしつつあります。2018年には消費者の4分の1が、7月のブラックフライデー期間に250ドル以上の買物をする予定である、と答えていました。また、2019年には、消費者はアパレル(51%)、家庭用品と電化製品(48%)、家電(44%)などの分野で買い物をする予定であると答えています。
Amazonに出店するメリットはプライムデーに留まらない
ECモール分析ツールを開発するProfitero社によると、プライムデーに参加したブランドは、イベント期間を超えて数週間に渡って、従来よりもはるかに多くの消費者がサイトを訪れ、実際の売上も増加することが報告されています。
また、Amazonに出店するメリットは、プライムデーばかりではありません。オンライン買い物客の44%が最初にAmazonのサイトを訪れており、Googleなどの検索エンジンから商品にたどりつく人は33%、WalmartやTargetなど、小売店から探す人は10%となっています。
消費者に影響を与えている不正レビュー
オンラインレビューのソフトウェアを手掛けるBazaarvoice社の調査によると、最近Amazonで問題になっている不正レビューは、プライムデー買い物客の44%に影響を与えていることがわかりました。37%は買い物に慎重になり、7%が「プライムデーには参加しない」と答えています。
実物を見ることのできないオンラインショッピングにとって、レビューはもっとも重要な指標となっています。Amazonだけでなく、他の小売サイトでも、不正レビューに対する消費者の意識は高くなっています。
まとめ
2015年7月から始まったAmazonプライムデーは、年を追うごとに多くの消費者を巻き込み、規模・売上とも拡大しています。それに対抗してWalmartなど他の大規模小売店も、同時期に「7月のブラックフライデー」としてセールを開催するようになり、こちらも多くの消費者を引き付けています。今後、「7月のブラックフライデー」はアメリカEC市場にとって、注目すべき重要なイベントとなり得るでしょう。
著者: Ami.T
在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。