企業がマーケティングを行う際に、自社が取り組む社会的責任 (corporate social responsibility=CSR)と連携させるブランドが増えています。消費者の側も、社会課題に積極的に関与し、より良い社会の構築に貢献するブランドを評価していて、CSRに取り組んでいるブランドから購入しようとしています。
一方、企業フィランソロピー奨励委員会(CECP)の「Giving in Numbers 2016」レポートによると、「ビジネスの実績と社会的責任の間には密接な関係がある」と報告されています。ここからわかるのは、第1に、企業が戦略的に社会的責任を取り入れ、それがビジネスの成功に寄与していること、第2に、企業がその戦略や成果を内外に対して効果的に共有していることです。逆に言うと、企業が効果的に事業とCSRを結びつけず、それを適切に社会に伝えていない場合、時間とリソースを無駄にする可能性があるのです。
本記事では、CSRマーケティングに取り組むメリットと、CSRを自社のマーケティング戦略に取り入れる方法を紹介します。
CSRマーケティングに取り組む3つのメリット
最初に企業がCSRマーケティングに取り組むことで得られる3つのメリットを押さえておきましょう。
ブランドの差別化ができる
CSRに取り組むことを通して企業が持つ価値観を明確に示すことができます。また、コミュニティの課題に取り組むことで、企業全体の社会的評価が高まり、競合ブランドとの差別化につながります。その結果、顧客ロイヤルティが向上し、売上げの増加につながります。
ハロー効果で企業イメージが向上する
ハロー効果(一部の目立つ特徴に引きずられて全体を評価してしまうという人間心理の癖)により、CSRの活動を通して企業全体のイメージが向上します。現代の消費者は企業に製品を提供する以上のものを求めるため、世界に変化をもたらそうとする企業を高く評価します。
SNSでのブランディングに効果がある
SNSの登場で消費者意識は進化し、顧客はインターネットを介してお気に入りのブランドと関わり、レビューを共有するようになりました。CSRの取り組みを通してブランドに共鳴し、ブランドの活動を評価した消費者は、SNSで「いいね」や再共有を行います。これにより、企業やブランド、また具体的な企業の取り組みが、広く認知されるとともに、顧客や潜在的な見込み客とも直接つながることができます。
CSRをマーケティング戦略に取り入れる5つの方法
次に、企業がマーケティング戦略にCSRを取り入れ、それを広く共有する方法を紹介します。
1.マーケティング部門と人事部門が連携してCSRイニシアチブを実現する
CSRイニシアチブとは企業が社会活動に取り組むための構想や戦略です。マーケティング部門が中心になって、自社の事業に関連する顧客の関心が高いテーマや社会的課題を特定し、マーケティング戦略と関連させつつCSRイニシアチブを計画します。計画の実行に当たっては、人事部門が中心になり、情報提供や社員教育を通じて企業全体の理解を深めます。
2. CSRを通じて専門性を高め、その分野でのリーダーシップを確立する
CSRを通じて社会課題に専門的に関わることで、その企業は業界や市場の信頼を得て、リーダーシップを確立できます。また、その分野で長期的に取り組んでいる非営利団体があれば、パートナーシップを構築し、協働を進めましょう。それによって一層強い影響力を社会全体に与えることができるでしょう。
3. CSRイニシアチブをブランドイメージに反映させる
CSR活動を通して伝えたいメッセージや価値観をコンパクトにまとめます。キャッチ―なフレーズやインパクトのある映像を用いてブランディングに反映させ、自社の取り組みを広く市場や社会全体に伝えます。
4. SNSを通じて自社のCSR 活動を紹介する
顧客や見込み客と直接触れ合うことができ、また拡散性も高いソーシャルメディアプラットフォームを活用し、自社のCSR活動を広く紹介します。
5. 消費者を自社の取り組みに参加させる
消費者が参加できるキャンペーンやイベントを企画します。消費者を巻き込んだ取り組みの成功事例として、Targetがあります。TargetはCircle Community Givingという活動を2019年から行っていますが、これは消費者の投票によって、Targetが資金提供を行う非営利団体を決定するというものです。Targetは消費者に積極的な役割を与えることで、社会全体に大きな影響力を及ぼしています。
マーケティングコミュニケーションと連携し、CSRの取り組みの実現を
企業が社会から評価され、消費者から選ばれるためにも、CSRへの取り組みが求められています。マーケティングコミュニケーションとCSRを連携させることで、CSRは社会貢献と同時にビジネスの成長にもつながります。
自社の製品やサービスが解決策となるような社会的課題を見つけ、その課題に取り組む非営利団体と協働しながら、顧客や潜在的な見込み客の関心を幅広く引くようなマーケティングコミュニケーションを展開しましょう。
弊社ではアメリカでのマーケティングノウハウを生かし、企業様ごとに最適なマーケティンの立案から運用までご提供いたします。お困りの際はぜひご相談ください。お問い合わせはこちらから。
著者: Ami.T
在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。