米国でここ数年注目を集めているBtoBのデジタルマーケティング手法「ABM(アカウントベースドマーケティング)」。従来の手法に比べて費用対効果が高く、アメリカではすでに多くのBtoB企業が実践しています。知っておきたいABMの特徴や実践方法を紹介します。
ABMは「対企業のパーソナライズマーケティング」
ABMとは、Account Based Marketing(企業ベースのマーケティング)の頭文字をとった名称です。ABMでは、マーケティング部門と営業部門が協力し、大規模な売上が見込めるターゲット企業を事前に選定します。さらに、該当企業内のステークホルダーを複数洗い出したうえで、該当企業向けにパーソナライズしたコンテンツやメッセージを届けます。重要度の高い顧客や見込み客に集中的にアプローチするため、従来の不特定多数に向けたキャンペーンよりも高い費用対効果が期待できます。
BtoB企業の幹部を対象に行なわれた2019年の調査では、「ABMは期待通り、または期待以上の成果を出した」という回答が69%にのぼりました。
アメリカではすでに浸透
ABMはアメリカで数年前から注目され、広く浸透しつつあります。上記の調査によると、ABMをまったく取り入れていない企業は6%。半数以上の企業が「ABMを取り入れて1年以上になる」と回答しました。別の調査では、2019年には企業のマーケティング予算の29%がABMに使われており、前年比で平均41%増額したものと推定されています。今後もABMの勢いは増しそうです。
高い効果が期待できるABMですが、すべての企業に最適というわけではありません。一般的に、従業員数1000人以上のBtoB企業に適した手法です。あなたの企業が小規模でマーケティングに割くリソースが少ない場合、ABMは現実的ではないかもしれません。
ABMを効果的に実践する6ステップ
ABMが自社に向きそうだと思ったら、ぜひ挑戦してみてください。これまでのマーケティング手法とは大きく異なりますが、下記のステップを参考にすればよいスタートが切れます。
ステップ1 対象企業に関する戦略を決める
まず、自社に大きな長期的利益をもたらす企業に共通している性質を洗い出します。たとえば、業界、企業規模、立地、年間利益など。これに当てはまる企業がABMのターゲットになります。このステップでは、顧客と日々直接関わる営業部門と協力し、営業部門主導で対象企業の戦略を決めることが大切です。
ステップ2 選定した企業をさらにリサーチする
1で決めた戦略に当てはまる企業を見つけます。さらに、社内の顧客データやLinkedInなどのSNSを使って、該当企業のステークホルダーが誰なのかを調べていきます。対象企業の意思決定がどのように行なわれているか、詳しく調べることがABMの成功の鍵です。
ステップ3 コンテンツやメッセージを作成する
集めた情報をもとに、対象企業に向けてパーソナライズしたコンテンツやメッセージを作成していきます。相手の悩みの種をいかに解決できるかを語りかけます。
ステップ4 キャンペーンに最適なチャネルを選ぶ
ターゲットとなるステークホルダーがオンライン上のどこで時間を過ごし、SNSにいるときに何を考えているのか。そうした理解に基づき、アピールに適したチャネルを決めます。FacebookやLinkedInは特定の組織や肩書の人に対象を絞ってキャンペーンを打つことができるので便利です。
ステップ5 キャンペーンを実行する
いよいよキャンペーンを打ちます。対象を絞っているだけに、同じメッセージを繰り返し送ったりして相手をうんざりさせないように注意が必要です。
ステップ6 キャンペーンの結果を測定する
キャンペーン開始から30日または60日後に、新しい企業のエンゲージメントがあったか、利益が上がったかなど効果を測定します。
組織内での連携がABMのカギ
ABMを実行するにあたっての難関のひとつが、営業部門とマーケティング部門の連携です。ABM以前からある課題ですが、ABMにおいては、「マーケティング部門は営業部門にサービスを提供する」と考えることができます。営業部門から情報を収集し、有効なキャンペーンを通して営業活動を支援する必要があります。
営業とマーケティングの協力体制がABMを成功に導きます。また逆に、ABMが営業部門とマーケティング部門の連携を改善する助けになる可能性もあります。一緒にABMのアプローチをとった営業チームとマーケティングチームは、ABMを進めていないチームに比べて利益目標を達成できる可能性が6%高い、という調査結果が出ています。
まとめ
これからのマーケティング手法、ABM。達成には多大な努力が必要ですが、大幅な売上増が期待できるかもしれません。
IT企業で4年間のプログラマーとしての経験を積み、その後6年間プロジェクトマネージャー業務を行ってきました。渡米後はEコマースマネージャーとして、日本企業のアメリカ進出を支援しています。日々アメリカEC関連の情報収集を行い、最新のデータと洞察をもとに、戦略の最適化や新しいアイディアを考案し、クライアント企業に競争力のあるソリューションを提供しています。