デジタル技術の革新、国際化、消費者の支出変化により、ファッション業界は荒波へ巻き込まれている。そんな中、現在のEコマースファッション業界がどこにいて、どこに向かっていくのか、さまざまな角度から探っていこう。
現在のEコマースファッション業界の売上関連データ
ファッション&アパレル製造レポートによると、全世界のEコマースファッション業界の売上は2018年の53.1兆円から、2022年には71.3兆円まで伸びると予想されている。この著しい成長には4つの大きな機会が関係しているという。
・西洋以外への国際市場の拡大
・オンラインアクセスの増加とスマートフォンの普及
・可処分所得を持った世界の中流階級層の出現
・体験型オンライン購買システムをつくる技術革新
また、購買力を持った潜在的な消費者の数も2020年には1200億人を超えると予想され、その消費者の多くが16~24才および25才~34才の若い世代になるそうだ。このデータはオンラインファッション業界にとって確実に追い風となるだろう。
そして、大手百貨店や小売業者を介さない、顧客への直接販売(direct-to-consumer)の割合も、比較していくと2027年以降には直接販売の割合が最も高くなっていくと予想されている。
Eコマースのカギは、やはり個人に寄り添ったサービスの提供
「消費者の個人化」
「消費者の個人化」というのは、ITを使ってユーザーごとのデータを管理し、個人個人に最適な商品やサービスを提供することを指している。Amazonにおける「あなたにおすすめ」のようなシステムだ。そして、ノスト氏による最近の Growing Your Online Funnel Webinarレポートによると、この「消費者の個人化」こそが、オンライン取引の成長をもっともリードする要因であることがわかっている。
たとえば、「43%の購入取引が、推奨商品の影響を受けた」、「94%の企業が現在そして未来の成功のために『消費者の個人化』が重要だと捉えている」というデータが出ているのだ。
また消費者も同様に、ファッション業界において「消費者の個人化」システムが構築されることを期待しているようである。
ソーシャルメディア(SNS)の活用もその一部だろう。個人が気に入ったユーザーをフォローするSNSでは、フォロワー(ファン)の多いインフルエンサーを利用したマーケティングが流行っている。特にインスタグラムは写真中心のシステムがEコマースファッションと相性がよく、他のソーシャルメディアを圧倒するほどの成約数を誇っており、すでにその戦略を使って驚異的な成長を遂げている企業も出てきている。
技術革新
バーチャルリアリティ、ウェアラブルテクノロジーなど多くの技術革新がファッション業界を変化させているが、特に「オンラインサイズ測定」と「オンライン検索」が”返品問題”の解決に一役買っている。
「スマートフィット技術」と呼ばれるものは、消費者のクローゼット内の衣服のサイズを測ったり、自身の体型とブランドの衣服を比較して、適切なサイズを購入できるような働きをする。ローン・アパレル社はこのようなシステムを導入し、導入初月に製品成約率を3.7%から9.8%に上昇させ、1年が経過したあとも成約率をキープ、最終的に20.4%の売上増収をもたらしたそうだ。
これらのサービスも、各消費者に寄り添ったサービスといえるだろう。
さらに進む国際化
オンラインショッピングは西洋を超え、確実に世界へ広がっている。下記のグラフをご覧になるとわかるように、世界各国に市場が広がっている。
まんべんなく世界に広がりつつあるものの、中国が市場規模73.9兆円で1位、アメリカが37.4兆円で2位と全体の約70%を占めており、やはりアメリカはEコマース先進国であることは間違いないと言えるだろう。
まとめ
いまのところ、Eコマースファッション業界の未来は明るい。市場全体は拡大を続け、新たに大きな消費者層も現れている。しかし、同時に流れに乗れない企業は取り残されているのも現状である。
そんな中、「消費者の個人化」「国際化」「技術革新」の3点に対して尽力していれば、かならず顧客はついてくる。このEコマース業界の大きな波に乗り遅れないよう、しっかりと準備をしていこう。
著者: Masako. S
米国の大学でマーケティングを専攻。現在はトランスコスモスアメリカにて、EC・事業開発/ チャットボット担当。米国EC業界の動向調査・最新ツールの導入に、熱心に取り組んでいる。