前回の投稿では、アメリカのEC展開においては、やはり自社ECサイトが販売チャネルの軸になるという点、そして自社ECサイトでは、ECプラットフォーム選びが重要と言うお話をしました。その中でもアメリカEC業界で10年以上の経験から「とりあえずこの中から選んでおけば間違いない」というプラットフォームを4つご紹介します。前述の通り、事業規模などによって選択すべきプラットフォームの選択肢は変わってきます。その為今回は、以下の条件に絞ってご紹介します。
- 年間売上 $10万ドル~1,000万ドル
- 構築予算 $5万ドル~$50万ドル
- 物販(デジタル商品の販売でなく)
#1 Shopify/Shopify Plus
Shopify(読み方:ショピファイ)は30万以上のオンラインショップが使うクラウド系プラットフォームの最大手です。ソーシャルコマース、モバイルショッピングへのフォーカスも高く、市場のニーズに合わせたアップデート、機能拡張が継続的に行われています。その直感的な操作性や簡易性から個人事業主レベルのユーザーが多く、利用層の大半を占めますが近年では企業向けのプラットフォームとしてもそのシェアを伸ばしています。
● Shopifyの特長
- 100以上のストアフロントテンプレート
- 1,500以上の機能拡張プラグイン(継続的に増加)
- ソーシャルプラットフォームとの連携(例 Facebookページ上でのEC販売機能)
- モバイル/モバイルアプリ対応
- 24時間テクニカルサポート
- 活発なユーザーコミュニティ(Shopifyユーザー間の情報交換)
● Shopifyを選ぶべきでない場合
- Shopify決済を使う場合、使わない場合の決済手数料が異なり、決済額(売上)によっては運用コストが高くつく場合があるので慎重な試算が必要
- 標準的な機能、施策の実装などは可能ですが、何か特別な機能などを実装される場合
*「ShopifyとShopify Plusの違い」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
#2 Magneto
Magento(読み方:マジェント)は世界のECプラットフォームの1/4を占めていると言われていて、ECプラットフォーム市場において長い間、常に上位に位置づけているプラットフォームです。オープンソースの為、多くの企業が(フルスクラッチでのシステム開発でなく)Magentoをベースに自社サイトを開発しています。その為、開発には開発リソースが必要になり、運用にも専用のリソースが必要になります。開発ならびに運用には一定のコストがかかりますが、カスタマイズ性に優れており、大規模ECサイトにも対応できるプラットフォームですので、多くのエンタープライズ企業が利用しています。
● Magentoの特長
- オープンソースの為、プラットフォーム利用費が無料 *Enterprise版は有償
- オープンソースの為、いくらでもカスタマイズが可能
- 9,000以上の機能拡張プラグイン(継続的に増加)
- 活発なユーザーコミュニティ(Magentoユーザー間の情報交換)
● Magentoを選ぶべきでない場合
- 開発リソース/運用リソースが無い
- 特別なカスタマイズなどが必要ない
*「Magento CommunityとMagento Enterpriseの違い」についてもこちらの記事で詳しく紹介しています。
#3 BigCommerce
BigCommerce(読み方:ビックコマース)は現在55,000以上のEC店舗が利用しておりクラウドECプラットフォームの大手の一社です。大企業から個人事業主まで、全ての事業規模を対象にプラットフォームはデザインされており技術的なリソースや特別なカスタマイズを不要とする場合には最も容易に利用できるプラットフォームとも言われています。クラウド系ソリューションを選択される場合はShopifyとBigCommerceの2つを比較検討すれば間違いありません。
● BigCommerceの特長
- ニュースレター配信機能、州税計算機能など多くの機能が標準機能として実装
- (一番の比較となるShopifyとの比較として)決済手数料が無い
- Facebook, eBay、Googleショッピングや価格比較サイトとの連携機能
● BigCommerceを選ぶべきでない場合
- ストアフロントテンプレート(Theme)が少ない
- マルチストア運用など複雑な構築・運用が必要な場合
#4 WooCommerce
WooCommerce(読み方:ウーコマース)は現在急速にその利用者を伸ばしているECシステムです(あえてここではプラットフォームと呼んでいません)。WooCommerceは世界で最も利用されているCMSであるWordPress(ワードプレス)をEC化する為のプラグインです。基本プラグインは無料で提供されていますので、自社で構築が出来る場合は無料でECを立ち上げる事が可能です。
● WooCommerceの特長
- オープンソースの為、プラットフォーム利用費が無料
- オープンソースの為カスタマイズ性が高い
- 機能拡張プラグインが豊富(継続的に増加)
- 活発なユーザーコミュニティ(Wordpress/WooCommerceユーザー間の情報交換)
● WooCommerceを選ぶべきでない場合
- 開発リソース/運用リソースが無い
ECプラットフォーム4選まとめ
ご紹介した4つのプラットフォームに関しては特徴の差はあれど、基本どのプラットフォームであってもECに必要な基本的な機能は全て備わっていると思って間違いありません。現在使っているシステムからの在庫データの移行、Amazonなどのマーケットプレースとの連携、売上分析・レポート、、実際に持ち合わせている環境や、実現したい事、見たい形、存在する人的リソースなど企業の環境・要件は実際様々であり、そのレベルになるとそれぞれのプラットフォームの差、得意・不得意が分かってくるかと思います。
上記のような点も含め企業にとって最適なプラットフォームを間違いなく選択する為には、もし社内にそういったリソースがあれば、そもそもオープンソースだったり、クラウド系プラットフォームの場合も無料のデモ環境が用意されていますので、実際にお試しただくか、利用実績のある現地の代理店などに実現したい事や今の環境を伝えたうえで相談されることをお勧めします。
繰り返しになりますが、最適なプラットフォームが選べるかどうかで、その後の運用コストや、新規施策を実施する際の実装にかかるコストが大きく変わる事がありますので大変重要な決断です。
著者: Daisuke.S
Eコマースソリューション営業
在米12年。トランスコスモスにおけるコールセンター事業運用のバックグラウンドを持ち、現在は日系企業を対象にECによる米国進出を営業の立場から支援。