ファッション・アパレルEC業界|新型コロナウイルスの影響と今後の課題

ファッション・アパレルEC業界|新型コロナウイルスの影響と今後の課題

新型コロナウイルスの世界的流行は、消費者の行動と市場全体に大きな影響を与えました。本記事は2020年から2019年までの市場概況を踏まえつつ、新型コロナウイルス危機以降の市場の動きを紹介します。

新型コロナウイルスがファッション・アパレル業界に与えた影響

新型コロナウイルスの流行によって消費者や業界が受けた影響として、以下の点を押さえておく必要があります。

  1. 小売業全体で実店舗の閉店が相次ぎ、eコマースへのシフトが大きく進んだ
  2. 消費者のオンライン接続時間やTV視聴時間が増大した
  3. テクノロジー製品やファッション関連商品の売上面での影響は、今後出てくると予想される

以上を踏まえ、今後ファッション・アパレルEC業界が押さえておくべき課題を見ていきましょう。

新型コロナウイルス以降のファッション・アパレルEC業界のトレンド

1.エシカルファッションブランドの台頭とファストファッションブランドへの影響

ARA、H&M、ASOSなどのファストファッションブランドは、年々、売上増加を達成していたのですが、2019年のサイトトラフィックは2018年よりも5-10%、中には26%減少したところもありました。その背景には、消費者が環境問題に意識を向け始めたこと、およびエシカルファッションブランド(環境に優しくファッション性も高い人気のアパレルブランド) の台頭が考えられます。エシカルブランドは、ユーザーエクスペリエンスの高い、洗練されたWebサイトによって、ファストファッションブランドを脅かしているのです。エシカルファッションブランドが優位性を持っている主なものは以下の機能です。

  • キーワード検索によるレビュー
  • 商品ページのライブチャット
  • チュートリアルコンテンツ
2.レビュー活用による返品率の抑制

ファッションeコマースユーザーが求めていることの1つに、ユーザーレビューがあります。試着できないeコマースユーザーにとって、購入者のサイズ感は非常に重要な情報です。これは同時に小売店側にとっては大きな問題である返品率を下げることに役立ちます。

3.ARショッピングの導入

実際に試してみることができないというオンライン購入の欠点を取り除く方法としてAR(拡張現実)を活用することがあります。ARを使えば、靴やバッグを身につけた姿を確認できるためより購入の可能性が高まります。

4.音声検索やビジュアル検索への対応

スマートスピーカーは現在アメリカの世帯の1/4が保持するようになっています。音声検索は会話型でなされるため、消費者の質問により合わせた形でのWebコンテンツの作成が必要になってきます。同様にビジュアル検索も増えています。ユーザーが撮った写真や、既存の写真を使って検索した際にも、対応できるようにしておく必要があります。

5.モバイルへの対応は不可欠

ノートPCではなくスマートフォンを通じて購入する人の割合は年々増加しています。

モバイルユーザーの増加に合わせてWebサイトをモバイル対応にし、最適化されたページレイアウトを提供します。また、支払い情報の保存などを通じて、ユーザーが画面をタップするだけで購入できるようにしておくことが大切です。

6.高い支持を得ている動画

フォーブスの統計によると顧客の64%が、商品動画視聴後に購入する可能性が高くなっています。

動画は視聴者によって共有されやすく、感情的な反応を引き出しやすいため、高い効果が期待できます。シスコによると、2022年までにはインターネット上のトラフィックの82%を占めるまでになると考えられています。eコマースで活用できる動画は次の4つの種類があります。

  1. 商品デモ…商品を360度いろいろな角度から見せたり、主な機能を説明できる
  2. ハウツービデオ…機能や使用方法を詳しく紹介でき、SNSにもシェアされやすい
  3. カスタマーレビュー…商品への信頼が高まる
  4. ライフスタイル…ブランドや商品についてのストーリーを伝えることができる
7.買い物ができるSNS広告

GoogleとInstagramがそれぞれに導入した広告は、広告を見ながら簡単に購入することができます。さらにInstagramはプラットフォーム上のチェックアウト機能も追加しており、新型コロナウイルスの流行時に実店舗への来客が途絶えた企業を助けるものになりました。またFacebookは2020年5月にFacebookショップを導入しています。

8.チャットボットの活用

ある統計によると、eコマースユーザーの51%がライブチャットによって購入する可能性が高くなると答え、質問にリアルタイムで回答が得られることが、eコマースサイトの最も重要な機能であると答えたユーザーも41%いました。

9.DTCブランドの台頭

デザインから製造、販売、流通まで、すべてを自社で手掛けるDTCブランドが勢いを増しています。中間費用を抑え、品質を向上させることができるだけでなく、マーケティング面でも顧客管理や効果計測が容易であるなど、DTCは従来のアパレル業界にはなかった優位性を持っています。まとまった資本や人的リソースが必要なため、参入障壁は低くありませんが、DTCブランドは着実に増加しています。

10.パーソナライゼーション

パーソナライゼーションアプリのNostoの統計によると、消費者の43%はパーソナライズされたおすすめやプロモーションの影響を受けるということです。ユーザーのWebサイト上での行動を追跡することで、ユーザーへのパーソナライズが可能になります。

新型コロナウイルス危機を追い風にするファッションeコマース

新型コロナウイルスの流行によって、今後のショッピングはeコマースが主流になっていることが明らかになりました。テキストおよび動画によるレビュー、注文が簡単であること、製品が返品可能であることによって、コロナ危機のさなか、初めてeコマースを利用した人の間でも、オンラインショッピングへの信頼が高まったのです。Zalando、Hugo Boss、Inditexなどのブランドは、新型コロナウイルス危機下でeコマース部門の売上を大きく伸ばしています。パーソナライゼーションや動画の活用、チャットボットの導入など可能なところから、ぜひ取り入れてみてください。

著者: Ami.T

在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。

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