近年では、Eコマースはあらゆる分野で消費者の購買行動を変革しつつあります。美容分野に関しても例外ではありません。美容分野といえば、「香りをかぐ」「色を見る」など、実店舗での体験が重要な分野に思えます。消費者はどのようにオンラインを活用し、接点を持っているかを見ていきましょう。
美容分野のEコマース市場概要
そもそも美容分野において、Eコマースはどのような状況なのでしょうか。
美容分野とは、化粧水等のスキンケア製品、基礎化粧品、アイシャドー等のカラーコスメからヘアケア・ボディケア等のパーソナルケア、香水等のフレグランス製品、シェービングクリーム等のメンズケアまでを含んだ分野のことを指します。
2015年時点で、美容分野でのオンライン売上は、全体の8%を占め、62億ドル(≒6,900億円規模)を売り上げています。Fung Global Retail & Techは、2022年までにオンラインに限らず美容業界全体が年間4.3%づつ伸び、4,298億ドル(≒47兆8700億円規模)に到達すると予想。その中でオンライン売上も比率を上げていくことが期待されています。
オンライン購買率の高い分野トップ3は、化粧道具で17%、スキンケアで15%、カラーコスメで10%です。化粧道具に関しては、プレゼント用途のニーズに支えられていると考えられます。割合の低い分野は、ヘアケア、デオドラント、脱毛剤で、いづれもオンライン浸透率は2%です。これらの分野はウォレットシェア自体は高い製品群ですが、出荷できる最小ロット数がネックになり、オンライン購買が伸びていないと推察できます。
美容分野での消費者の3つの行動パターン
美容分野において、消費者はどのようにオンラインを活用しているのでしょうか。ATカーニーが800人のアメリカ人女性へ調査した結果、大きく3つの行動パターンが見られました。オンラインと実店舗を賢く使い分け、効率よく情報を集める消費者の姿が浮かび上がります。
【パターン1】オンラインラバー(回答者の55%)
この分類の消費者は、オンラインでの買い物を好んで行いますが、実店舗での購買も行います。最も特徴的なのは、製品のレビューをSNSでシェアすること。SNSを活用することで、価格を比較したり、特別な販促情報を手に入れたり、新しい製品を見つけたりすることを目的にしています。この層の消費者は、前年よりもオンライン購買の頻度を上げつつあると報告されています。
【パターン2】オンラインウォッチャー(回答者の36%)
この分類の消費者は、オンラインラバーと同様ネットで情報収集を行いますが、実店舗での購買を好みます。オンラインでは製品レビュー、価格、販促などの情報を事前に収集。お店に訪れる際には、何が欲しいかを明確に理解している状態です。この層の消費者は、製品を試したり、時には店員のアドバイスをもらうといった生の体験を好みます。そして、それをすぐに買うということにも価値を置いています。
【パターン3】オンラインショッパー(回答者の9%)
この分類の消費者は、実店舗を見ることを好んで行いますが、実際に買うのはオンラインです。時にはオンラインで事前にレビューを確認してから、実店舗で商品を確認。そして人ごみや列に並ぶといった手間を避けつつ、オンラインで快適に買い物を行います。1/3ほどの回答者が過去よりもオンライン購買の頻度が上がっている傾向にあります。
以上の行動パターンからわかることは、消費者はオムニチャネルの活用方法を完全にマスターしているという点です。小売業や美容ブランドにとっては、消費者のニーズを満たすようオムニチャネルの活用ノウハウを高めていく必要性があると言えるでしょう。
出所:A.T. Kearney Beauty and the E-commerce Beast
How Beauty Brands Are Winning at E-Commerce
著者: Ami.T
在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。