アメリカの【アルコール市場】と【Eコマース】の可能性 Part 1

アメリカの【アルコール市場】と【Eコマース】の可能性 Part 1

世界規模で拡大を続けるEコマースですが、アルコール市場は、現状では未成熟の状態にあります。しかし、アルコールのオンライン販売に対する需要は、今後、急速に増大していくものと考えられています。

ここではアメリカのEコマースにおけるアルコール市場の現状と障壁、今後の展望について、2回に渡っておとどけします。第1回目はアルコール市場の現状と、今後オンライン販売の需要を増大させる要因について紹介します。

オンラインでのアルコール販売の現状

2016年9月Nielsen Global connected Commerceの調査によると、63か国3万人超の回答者のうち、これまでにアルコールをオンラインで購入した経験のある消費者は全体の約8%にとどまっていました。

しかし、先ごろ発表されたデータでは、未だカテゴリー別での順位は低いものの、アルコール飲料の購入経験者は8%から14%へと増加しており、急速な伸びを見せていることがわかります。

世界規模 カテゴリー別オンライン購入パーセンテージ

また、国別状況を見ると、アルコール飲料をオンラインで購入する割合は、中国や日本、イギリスは20%を超えていますが、アメリカは8%にとどまっており、かなり低い数値です。

ビールに限っても、ミラークアーズ社の調査によると、アメリカではビール消費者のうち、日常的にオンラインでビールを購入する消費者は、わずか4%であるのに対し、イギリスでは34%もの消費者がオンラインで購入していることがわかっており、オンラインでの購入が定着していることがうかがえます。

その理由として、イギリスをはじめとしたヨーロッパでは、大手小売業者が非常に早い段階で、アルコールだけでなく食料品全般で、クリック&コレクト(※オンラインで購入した商品を、消費者自身が受取用のポイントで受け取る)を導入したことが挙げられます。これによって消費者は、アマゾンなどオンラインで注文した後、スーパーへ行き、店内に足を踏み入れることなくドライブスルーや店舗外で商品を受け取ることができるようになったのです。イギリスでは、このスタイルがアルコールを購入する一般的な方法になりつつあるのに対し、アメリカではクリック&コレクトがやっと浸透し始めたという段階です。

オンライン販売のニーズを増大させる要因

オンラインで購入する商品カテゴリーの中では、未だ下位に位置するアルコール飲料ですが、今後需要は増大していくと考えられています。つぎにその要因を見ていきましょう。

1. 実店舗型からオンラインショッピングへの移行

今日の消費者は、オンラインショッピングを単に「買い物」としてとらえるのではなく、インターネットを利用して商品を研究し、価格をチェックし、レビューを読むなど多面的な消費行動の一環としてとらえています。食料品においても例外ではなく、アマゾンを中心に、オンラインを通じての購入が増加しています。

アルコールであれば、クリック&コレクトや宅配によって簡単に購入できるだけでなく、実店舗よりもはるかに幅広い商品の中から、比較・選択することができます。たとえばワインであれば、アマゾンなら数千種類、ワイン専門サイトのwine.comなら1万4000種類の中から、比較し、選択することができるのです。

2. アルコールのEコマースプラットフォームの登場

2012年のDrizly、2014年のMinibarなど、近年オンライン上にアルコール飲料を販売するためのプラットフォームが数多く登場し、消費者の購買行動が大きく変化しました。たとえばDrizlyにアクセスすれば、複数の地元店舗の在庫が確認できます。商品や価格、入手しやすさを比較して決定し、注文した後は、1時間以内に商品を受け取ることも可能となっています。このようなEコマースプラットフォームは実店舗へ行くよりも利便性で優り、ショッピングにモバイルを活用する層を取り込みつつあります。

3. デジタルネイティブ世代が飲酒年齢に到達

コンピューターやインターネット、スマートフォン、モバイルアプリとともに成長した世代が飲酒年齢を迎え、彼らはアルコールも他の商品同様に、オンラインで購入することを求めています。現状でも実店舗で購入する消費者の平均年齢が49歳であるのに対し、オンラインで購入する消費者は39歳と、年齢分布を見ても、今後オンラインの割合が増えていくことが予想されます。

まとめ

アメリカではオンラインでアルコールを購入する消費者の割合は、中国や日本、イギリスなどが20%を超えているのに対し、現状では8%と低い数値となっています。しかし、消費者の購買スタイルの変化やEコマースプラットフォームの登場、また、モバイル機器の扱いに慣れたデジタルネイティブの世代が、飲酒年齢に到達したことなどが要因となって、今後はオンラインを通じた購入者の割合は確実に増えていくと考えられます。

著者: Ami.T

在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。

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