技術発展により誰でも手軽にECサイトを構築することのできるプラットフォームが整ったこと、新型コロナウイルスの感染拡大で多くの事業者がEC展開せざるを得ない状況になったことなどから、オンライン販売が近年急速に拡大しています。
店舗販売と比較して、実店舗運営に係る莫大なコストを節約できるだけでなく、地理的な制約なく自由にターゲティングし事業展開できるなど、オンライン販売には数多くのメリットがあります。一方で、消費者の姿を直接見ることなく取引が成立するという特徴から、悪質な詐欺行為が後を絶たないというデメリットがあることも事実です。詐欺行為によって被る損害はその取引による直接的な損害だけではなく、サイト利用への不信感が高まることによる取引数の減少など間接的な損害にまで及ぶため、決して詐欺対策を甘く考えてはいけません。
今回はECサイト運営の負の側面となり得る詐欺行為とはどういったものがあるのか、その対策として何に注意するべきなのかを紹介します。
<ECに係る詐欺行為とは>
ECに係る詐欺行為はニュースなどで大々的に取り上げられることが比較的少ないため、あまり身近なものとして捉えられていませんが、JuniperResearchが行った調査によると2021年に報告された詐欺被害件数は2020年から20%増加しており、その被害金額は200億ドルを超えるとされています。ECに係る詐欺行為の手口はクレジットカードの不正利用、アフィリエイトの不正、チャージバックの悪用など多岐にわたり、詐欺師たちはあらゆる角度から事業者の利益を狙っています。
・クレジットカードの不正利用
クレジットカードの不正利用とは詐欺師が盗み取ったクレジットカード情報によって決済を行うものです。クレジットカード情報を盗まれた本人が金銭的損害を被ることはもちろん、この手の詐欺では盗み取ったクレジットカードの機能が停止されていないかを確認するために詐欺師が繰り返し犯行に及ぶため、多くの事業者が被害を受けるという特徴があります。1件ごとの被害額は少額で済むケースが多いですが、件数が多いため積もり積もって大きな被害に発展することもあり、注意が必要です。
どのようにして詐欺師たちがクレジットカード情報を盗み取るかについても併せて確認しておきましょう。まず、フィッシングメールによるアカウントの乗っ取りは代表的な例と言えるでしょう。これはECサイトを装ったフェイクメールにおいてアカウントログインを促し情報を抜き取るといった手法です。その他にもフェイク格安サイトの利用といった巧妙な手法もあります。これは①人気ブランド品をセール価格で販売するフェイクサイトを構築・活用することで消費者の情報を抜き取り②注文を受けた商品を実際に配送するものの③取引後に抜き取ったクレジットカード情報を悪用するといった流れで行われています。この手法では消費者の手元には実際に注文した商品が届くため、詐欺師たちは疑いの目を向けられにくく、被害者はいつ情報を抜き取られたのかわからないといった状況に陥ります。
・アフィリエイトの不正
アフィリエイトの不正とは多くの事業者が活用しているアフィリエイトマーケティングの仕組みを悪用した詐欺行為であり、詐欺師たちが第三者になりすまし誘導件数の水増しを行うことでより多くの仲介手数料を騙し取られてしまう可能性があります。
・チャージバックの悪用
チャージバックの悪用とは本来公正な取引を実現するために設けられている消費者保護サービスを逆手に取った詐欺行為です。事業者側はクレーム処理にコストをかけるよりも返金に応じた方が総合的なコストを抑えることができるという事実を詐欺師たちが悪用することによって生じるこの手の詐欺行為も後を絶ちません。
<怪しい取引相手を見極めるポイント>
以上のような詐欺行為に巻き込まれてしまわないようにするためには、ECサイト利用者に怪しい行動がないかに注意を配ることが重要です。具体的には次のようなポイントを意識しておきましょう。
・登録情報に矛盾は生じていないか
IPアドレス、ZIPコード、メールアドレスなど各種登録情報に矛盾がないかチェックしましょう。詐欺師は盗み取った多様な情報を組み合わせて悪用していることが多いため、登録情報に矛盾が生じている際は注意が必要です。
・配送先が分散していないか
詐欺師は自身の特定を避けるべく可能な限り情報を分散させる傾向にあります。同一の請求書送付先に対して配送先があまりにも異なることが多い場合は注意しましょう。
・過剰な繰り返し注文
セール時期でもないのに同一人物が繰り返し注文を行っている場合は詐欺行為の一端かもしれないことを心に留め、その消費者の動向を意識しておくべきでしょう。
・不自然なほど多様なクレジットカードの利用
世界ではたくさんのクレジットカードサービスが提供されていますが、個人利用においては特別な事情がない限り、一人で何十種類ものクレジットカードを利用する機会は少ないでしょう。このような利用を見かけたら要注意人物としてマークしておいても良いかもしれません。
・連続した取引中止
人間同士の取引なのでミスなどによってそれが中止されることはもちろんあります。しかし、あまりにも連続して取引を中止している消費者を見かけた場合にはクレジットカードの不正利用を企んでいる可能性を考慮して取引を行わないことも検討しましょう。
<まとめ>
今回はECサイトを運営する際に注意が必要な詐欺行為について紹介しました。多様な手法の詐欺が溢れていますが、日ごろの小さな意識によって被害を未然に防ぐこと、最小限に抑えることは可能です。セキュリティサービスを提供している会社もあるので、心配な方はこういったサービスの利用を検討してみるのも良いと思います。いずれにしても、こういった悪質な行為について正しく認識してECサイトを運営することが重要です。ぜひ本記事を参考にECサイト運営を改めて見直してみてはいかがでしょうか。
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著者: Shunji.O
デジタルマーケティングマネージャーとして5年経験を積み、渡米後は10年間Eコマース事業に携わってきました。現在、トランスコスモスアメリカでプロジェクトマネージャーとしてアメリカ市場におけるEコマース戦略の立案と実行に注力しています。市場動向の分析、競合分析、販売戦略の開発に加え、デジタルマーケティングマネージャーとしての経験を活かしてオンライン広告キャンペーンの最適化など、幅広いマーケティング活動を通じて事業成長を促進しています。