現在、全世界で10億人以上がオンラインショッピングを楽しんでいるといわれています。アメリカ国内でも2019年の第3四半期には、小売売上全体の11%をEコマースが占めるなど、業界は活況が続いており、今後のさらなる成長が見込まれます。一方、より消費者のニーズに応えるために、Eコマース側も、急速に変わりつつあります。2020年、どのようなトレンドが起こるのでしょうか。本記事では新しい流れを6点に絞ってご紹介します。
1. 販売品目を絞る
多くのブランドが、コアとなる商品の完成に集中し、1品目か2品目を販売するという戦略を取っています。その代表的な例をDtoC(メーカー直販EC)スタートアップのBonobosに見ることができます。Bonobosはたった1種類のパンツのみを販売し、3年もしないうちに950万ドルの収益を上げました。
またBed-in-a-box(※オンラインで注文後、持ち運びしやすい形で包装されて届くマットレス)のスタートアップCasperは、2014年に1つのマットレスだけを販売し、2年のうちに1億ドルの収益を上げました。今なおCasperは3種類のマットレスのみに販売品目を絞り、利益を上げ続けています。
2. Instagramを通じてのインフルエンサー・マーケティング
業界のリーダーをインフルエンサーとして契約し、商品やブランドメッセージを視聴者とシェアするインフルエンサー・マーケティングは拡大を続けています。インフルエンサー市場は約65億ドルの価値があるとされ、SNSの影響力のある業界は、2020年までに50億ドルから100億ドルの価値を持つといわれています。なかでもインフルエンサー・マーケティングの人気が高いのがInstagramです。Instagramで特徴的なのは、数百万人の支持者を持つ有名人よりもむしろ、1,000人~10万人程度のフォロワーを持つマイクロインフルエンサーの方が大きな影響力を持っていることです。
3. SNSでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
SNSではインフルエンサーだけでなく、ユーザーも大きな役割を果たしています。UGC(User Generated Contents)と呼ばれる、ソーシャルメディアのユーザーが作成した商品やブランドの動画や写真が、ブランドの魅力的なコンテンツとなっているのです。有名人ではない、身近な人々が、実際に商品をどのように使用しているかを消費者が確認できることが、ブランドの信頼性を高めるものになっています。
化粧品ブランドのGlossierは、Instagramに170万人のマイクロインフルエンサーを抱えており、そのマイクロインフルエンサーたちが会社の成長を70%も引き上げる要因となりました。
4. ショッピング体験をパーソナライズ
過去の購入履歴と閲覧履歴に基づいて、パーソナライズされたオンラインショッピングを体験することで、消費者はブランドとのつながりを感じるようになることから、94%の企業がパーソナライズを重視するようになっています。ある調査によると、パーソナライズすることによって、カートに商品を追加する可能性が110%増加し、当初の予定よりも40%多く支出することがわかりました。
Madewellは返品された商品のサイズを元に顧客サイズを把握し、そのサイズを商品ページに表示することで、顧客が関心を持った商品で、そのサイズが入手可能かどうかがすぐにわかり、カートに追加できるようにしています。
5. 社会的価値を持ち、環境問題への取り組みを支えるブランド
今日の消費者は、自分の購買行動が社会全体にどのような影響を与えるかを意識するようになっており、持続可能な商品とブランドを高く評価しています。たとえば、ダイヤモンド・サプライヤーのBrilliant Earthは、リサイクル金属を利用しており、純利益の5%を、慈善団体に寄付しています。特に1996~2012年生まれのZ世代の87%が、社会的・環境的に価値のあるブランドから購入したいと考えています。
6. 小規模な小売業者の増加で多様化する市場
Amazonやebay、Jet、Wallmartなど、数多くのEコマースプラットフォームでの在庫管理を一括で行えるSellbriteのようなソフトウェアの登場によって、マルチチャネルでの販売が容易になりました。Sellbrite を使用し、3つ以上のチャネルを利用する販売者は156%も売り上げを伸ばしています。Sellbrite自身も1年で300%を超える成長を見せており、マルチチャネル販売は今後も加速していくでしょう。
その代表的な例をご紹介します。アクセサリーを自社サイトで販売するJin Linは、Sellbriteで商品リストを一元管理し、マルチチャネルで販売することで、100万ドルを超える収益を上げていると推定されます。
まとめ
変化の激しいEコマースでは、トレンドの移り変わりに注意を払う必要があります。ここで挙げた企業の取り組みの例が、どこの企業にも当てはまるものではありませんが、トレンドにはかならず理由があります。その理由を検討することで、顧客のショッピング体験の向上や、コンバージョン率の増加に役立ててください。
著者: Ami.T
在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。