アメリカではここ数年、ユーズド商品を売り買いできるセカンドハンド・ストアが消費者の間で人気です。特に、オンラインのリセールプラットフォームは記録的に業績を伸ばしています。この記事では、なぜセカンドハンドECサイトが成功しているのか、背景と戦略、課題への取り組みを紹介します。
話題のセカンドハンドE Cとは?
「セカンドハンドEC」とは、消費者から買い取ったユーズド商品をオンラインで再販する業態のことで、「リセールEC」「リユースEC」とも呼ばれます。ゴミの削減やサステナビリティに対する消費者の意識が高まるにつれて、米国でのセカンドハンドセールスは大きなトレンドに成長しました。オンライン販売は特に好調で、リセールのためのプラットフォームが次々に誕生して人気を博しています。
中でもめざましい成功を収めているのは、ファッション業界のリセールです。新しいリサーチ結果によると、アメリカの中古アパレル市場は2019年から2029年までの10年間で3倍以上に成長するものとみられます。
このトレンドを牽引しているのは、Depop、Farfetch、Poshmark、The RealRealといったセカンドハンドEC専門のオンラインプラットフォームです。たとえば、The RealRealは、2021年の第1四半期に3億2700万ドルという記録的な流通取引総額を叩き出しました。このうちの80%はリピート顧客によるもので、消費者との間に緊密な強いつながりを築いていることがわかります。
こうした成功をみて、PatagoniaやLevi’sなど多くのアパレルブランドが、自社のセカンドハンド商品販売に乗り出しています。
セカンドハンドE Cの利点とは?
ブランドや小売業者、マーケットプレイスにとって、リセール市場への参入には主に二つの大きな利点があります。第一にサステナビリティの向上、第二に顧客満足度の向上です。
・サステナビリティの向上
企業、特にアパレルブランドにとって、サステナビリティは大きな課題です。ファストファッション隆盛とパンデミックによるオンラインショッピング増加の影響で、ファッション業界が地球環境に与える影響が憂慮されているためです。
セカンドハンド商品の販売にシフトすれば、ファストファッションの製造減につながり、水質汚染や温室ガスの排出、資源のムダを縮小できると考えられます。ブランドが循環型経済を自社のコアバリューとして扱えば、小さな変化が積み重なり、大きな変化につながっていきます。
・顧客満足度の向上
近年、消費者は自分の消費行動が環境にどのような影響を与えるかに敏感になっています。多くの消費者はサステナビリティを重視する企業から買い物をしたいと考えています。IBMによる2020年のレポートでは、消費者の10人のうち6人近くは、環境への悪影響を抑えるためならば消費習慣をよろこんで変えるつもりだとのことです。
こうした動きはとりわけ「Z世代」の若者の間で目立っています。Z世代では古着の売買がトレンドであり、ライフスタイルの一部になっているのです。最近の調査結果によると、Z世代がリセールファッションに興味を持つのは、彼らの「新しいもの」の定義や、自己表現に対する考え方を反映しているということです。
加えて、もう使わなくなった衣類を捨てずにマーケットに戻せることは、消費者にとって便利なことでもあります。現在、アメリカで古着市場が通常のアパレル市場に比べてはるかに速く成長しているのは、これらの事情により顧客満足度が高いためです。
セカンドハンドE Cの問題点とその解決法
オンラインでのリセール事業には特有の難しさがあり、適切に対処する必要があります。
たとえば、セカンドハンドECでは顧客が売ってくれた商品を販売するため、在庫のコントロールができません。サイト訪問者を在庫切れでがっかりしないよう、類似商品のサジェスト機能や、過去の検索履歴に基づくおすすめ機能を充実させる必要があります。
商品説明の標準化やタグ付けが難しい、という問題もあります。中古品を売る人が商品説明をアップロードするため、売り手によってばらつきが出るのです。そこで、商品写真を分析して説明やタグを自動生成できるA Iの導入が鍵になります。
また、商品の真偽を判定する必要があります。ラグジュアリー商品に特化したプラットフォームでは実物を鑑定できるプロを雇う必要がありますが、商品単価が安く人をたくさん雇えない場合などにはAIによる判定が役に立ちます。
セカンドハンドECをスムーズに運営するために必要なテクノロジーはすでに存在しています。それらをいかにうまく活用するかが大切です。
まとめ
リセール市場は今後も急成長が続きます。セカンドハンドECへの全面的な参入は、全てのブランドにとっての最適解というわけではありません。しかし、セカンドハンド要素を部分的にECストアに取り入れる方法もいろいろと可能になりつつあり、今後の導入を検討することはブランドにとってプラスになるかもしれません。このトレンドは引き続き要注目です。
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著者: Hitomi.N
IT企業で4年間のプログラマーとしての経験を積み、その後6年間プロジェクトマネージャー業務を行ってきました。渡米後はEコマースマネージャーとして、日本企業のアメリカ進出を支援しています。日々アメリカEC関連の情報収集を行い、最新のデータと洞察をもとに、戦略の最適化や新しいアイディアを考案し、クライアント企業に競争力のあるソリューションを提供しています。