急成長を見せる アメリカ の オンライン 食品市場 ―今後10年間で5倍に成長する見通し

急成長を見せる アメリカ の オンライン 食品市場 ―今後10年間で5倍に成長する見通し

アメリカにおけるオンライン食品販売は、急成長を遂げています。ここでは市場の今後とともに、食品市場の特色や、小売業者がオンライン食品販売に参入する上での留意点などを見ていきます。

オンラインでの食品販売は今後急増する見込み

アメリカのオンライン食品市場は2017年には約142臆ドルの売上を見込んでおり、2021年には297億ドルに到達すると考えられています。現状ではこの数値はアメリカの食料品および飲料の総売上高のわずか4.3%に過ぎませんが、2025年までには高ければ約20%のシェアを占めるのではないか、最低でも8%は確保するだろうと予測されています。

戸別あたりの購入率を見ると、2014年には19%の家庭、すなわち5軒に1軒弱がオンラインで食料品を購入していましたが、2017年には4軒に1軒に増加しています。今後はスマホやパソコンの利用に慣れている世代が消費の中心になっていくことを考えれば、10年以内には10軒に7軒の家庭で、オンラインを活用した購入スタイルが一般的になると考えられています。また、購入量も増え、オンライン利用者の60%が、食料品全体の約1/4をオンラインで購入するようになるだろうと予測されています。

その背景には、デジタルネイティブの世代を中心に、スーパーへ出かけ、精算時に長蛇の列に並ぶようなライフスタイルを避けたがる心理が働いているようです。彼らはむしろ様々な販売店のウェブサイトで商品を選び、その日のうちに配達してもらうという利便性を好むのです。

アメリカのオンライン食品市場には、現在アマゾンフレッシュ、フレッシュダイレクト、ウォルマート、セーフウェイなどが参入していますが、そのほかに、新しいビジネスモデルとしてインスタカートがあります。サンフランシスコを拠点とするインスタカートは、消費者がアプリを通じて地元の複数の店舗で生鮮食品を含む商品を注文すれば、「ショッパー」がそれを購入して注文後、2時間以内であれば3ドル99セント、1時間以内であれば14ドル99セントの手数料で届けてくれるというものです。

実店舗と補完し合うオンライン販売

食品市場の特徴として挙げられるのは、Eコマースの台頭が実店舗の崩壊を招くものではなく、オンライン販売によって、消費者が食料品店に求める役割が変わりつつあるということです。

消費者の多くは生鮮食料品に関しては、実際に見て、ふれることのできる実店舗での購入を好みます。そのため小売業者の側は、消費者の購買行動が変化していることを理解した上で、実店舗とEコマースの両方を活用する方向に向かっています。

将来的には、今日スーパーの中心部に配置されている人気の缶詰や箱詰め食品は、売場から姿を消してオンラインで購入する顧客のために倉庫に移されることになると予測されます。反対に、実店舗の特色をもっと活かすために、生鮮食品や惣菜コーナー、パンなどの部門をこれまで以上に充実させるだけでなく、寿司バーなどのように流行を取り入れたフードコートなどを展開することで、顧客を店舗に引きつけるための動きが進むでしょう。

消費者のオンライン活用も、ウェブサイトで商品を選択して配達してもらう、またはクリック&コレクトで指定の場所に取りに行く、というスタイルばかりではありません。デジタルネイティブの世代は、実店舗で購入する際にも、5人に3人が、店に入る前にモバイル機器を使ってクーポンを探し、半数以上がモバイルアプリを使って購入すると答えています。

またAmazon Goのように、スマホを使って無人の店舗で買い物をするという新しい購買スタイルも始まっています。

オンライン食品市場参入に必要なこと

上記のように急速な伸びを見せる食品市場ですが、参入のためにはダークストア(オンラインストア専用の物流センター)の設立や、効率的なピッキング作業を行うためのシステム構築、物流、デジタルサプライチェーンなど、多大な投資が必要となります。

反面、利幅の非常に薄い食品小売業者にとっては、オンライン販売のシェア増大を見過ごしたままでいれば、たちまち深刻な打撃をこうむることになります。利幅の薄い業界で、高額な投資を行わなければならないという二律背反の問題を解決できる万能の処方薬はありませんが、個々の小売業者がそれぞれの状況に応じた適切な戦略を立てるためには以下の3点を押さえておく必要があります。

第1に、オンラインショッピングに対する態度に応じて、顧客をセグメント化し、それぞれの好みを把握し、彼らの消費行動に合わせることが大切です。食品の40%をオンラインで購入し、品質と品揃えを重視する層や、オンラインを利用しつつも郊外に住み、地元の食料品店も利用する層、ショッピングの中心は実店舗の層、また高齢者が中心の、デジタル機器に精通していない、価格に敏感な層と、それぞれのセグメントごとに適切な価値提案を行うことが重要です。

第2に、地域に適応することです。オンラインの活用程度によらず、あらゆる消費者は実店舗で買物をします。商品や価格、販促活動に対する個人の好みを理解するだけでなく、彼らがどこを通って店舗にやってくるか、ほかにどのような店を訪れるかについて、機械学習を通じて把握することが必要です。

第3に上記の2点を踏まえ、顧客を引き付けるためのショッピング体験と価値提案を行います。こうしたことは容易ではなく、投資もしなければなりませんが、将来を見据えて早めに着手する必要があります。

まとめ

オンライン市場は急速な伸びを見せており、2025年までには食品市場の20%を占めるのではないかという予測もあります。しかし、オンラインが実店舗にそのままとってかわるのではなく、実店舗が大きな強みを持つ生鮮食品部門、オンラインが強みを持つ缶詰や香辛料などの部門と、今後住み分けが進んで行くと考えられます。オンライン部門への参入には多額の投資が必要で、利幅の薄い業界にとっては容易なことではありませんが、小売業の多くは将来を見据えつつ、様々な取り組みが模索されています。

出所:Online grocery sales set to surge, grabbing 20 percent of market by 2025
3 Key Ingredients of Online Grocery Retailing


著者: Hitomi.N

IT企業で4年間のプログラマーとしての経験を積み、その後6年間プロジェクトマネージャー業務を行ってきました。渡米後はEコマースマネージャーとして、日本企業のアメリカ進出を支援しています。日々アメリカEC関連の情報収集を行い、最新のデータと洞察をもとに、戦略の最適化や新しいアイディアを考案し、クライアント企業に競争力のあるソリューションを提供しています。


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