アパレル製品の消費は、全世界で堅調な伸びを続けていますが、その中でもひときわ目立っているのがプラスサイズ婦人服市場です。中でも今後の急速な伸長が見込まれているのが、Eコマースの分野です。
ここではプラスサイズ婦人服市場の概況やEコマースが活況を見せる背景、今後の消費者動向などをご紹介します。
プラスサイズ婦人服市場、2018-2026年の平均成長率は4.4%
2017年、世界のプラスサイズ婦人服市場は1,652 億ドルに達し、2018年から2026年にかけては平均成長率4.4%が見込まれることが明らかになりました。
プラスサイズの部門は、アパレル業界の中でも際立った成長を遂げています。消費者は、プラスサイズであってもほかのサイズと同様の、ファッション性と豊富な種類を求めており、小売業者は、プラスサイズ専門のブランドを立ち上げることで、それに応えようとしています。このような需要の高まりと、企業側の努力によって、プラスサイズ婦人服市場は今後、売上を拡大させていくことが予測されています。
高まる需要とプラスサイズ婦人服特有の問題点
18歳から65歳のアメリカ人女性の過半数が、サイズ14(※日本の17号、XLに相当)以上を着ています。そしてこの割合は、多くのアメリカ人の食生活やライフスタイルの変化によって、今後一層増えていくことが予想されています。
ところが現状では、プラスサイズ婦人服の総売上高は婦人服全体の売上高の5分の1にも満たない状況にあります。というのも、長年にわたってブランド、デザイナー、小売業者はいずれも、ファッショナブルなプラスサイズのスタイルを提供できずにきたからです。プラスサイズというと、せいぜいがトップスやワンピース、レギンスに限られてきました。
ハイエンドのデザイナーズブランドの多くは、サイズの大きな服の製造に積極的ではありません。
また、製造面からみても、プラスサイズの服を作ることは困難を伴っています。平均的なサイズを拡大するだけではフィット感を生み出すことはできず、プラスサイズの服を作るには、技術やデザイン、製品開発の面で特殊な技能が要求されるからです。しかもプラスサイズの服を生産するためには、布地をはじめとしてより多くの製造コストがかかるという問題もあります。
しかし、小売業者はプラスサイズ人口の増加と需要に応えるために、さまざまな対応策を取っています。たとえばWalmartは、14歳以上のプラスサイズ女性専用ブランドEloquiiを買収し、またプライベートブランドのTerra&Skyを立ち上げました。その他のブランドも、プラスサイズの品ぞろえを強化するために、さまざまなアプローチを取っています。
急成長を遂げるオンラインチャネル
2017年、プラスサイズ婦人服で最大の市場シェアを持っていたのが大型量販店で、専門店とオンラインでの購入がそれに続きました。
しかし、消費者の多くは、オンライン購入にシフトしつつあります。というのも、実店舗でのプラスサイズ商品の販売は、デパートやショップの特定のコーナーに限られており、顧客はそこへ行くことに恥ずかしさを感じているからです。
それを受け、見込み客が豊富な種類の商品を見て回ることができるようなウェブサイトを備えるオンライン小売業者も増えています。オンラインショッピングは小売店と消費者に、新たな機会を提供しているのです。
SNSを通じた消費者の声が業界を動かす
テス・ホリデーやアシュリー・グラハムのようなプラスサイズモデルの登場は、プラスサイズの婦人服が多くの人にポジティブに受け止められるきっかけにもなりました。
彼女たちはSNSで活発な発言し、特にホリデーはインスタグラムの#effyourbeautystandardsを通じて「女性が自分の体に誇りを持てるようになろう」という運動を巻き起こしています。
それに呼応するかのように、プラスサイズを身に着ける女性もSNS上で声を上げるようになっています。
「プラスサイズであっても、いわゆるストレートサイズで提供されているのと同じ生地やスタイルの、ファッショナブルで流行を取り入れた服を購入したい」と。
ブランドや小売業者の側は、いまだこの声に十分には応えられていない状況ですが、プラスサイズ婦人服市場は、こうした声を取り入れた新しい商品が次々と発売されることでしょう。
著者: Ami.T
在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。