ECビジネスのスタートアップへ資金を支援するClearbanc

ECビジネスのスタートアップへ資金を支援するClearbanc

消費者にECサイトを通じて直接商品を販売するDTC(Direct to Consumer)スタートアップにとって、Facebook広告やGoogle広告などのデジタル広告は極めて重要です。その広告費を中心に融資を行うベンチャーキャピタルとして注目を集めているのがClearbancです。本記事ではClearbancを有名にした「20分タームシート」やClearbancが対象とする企業、また資金提供にとどまらないClearbancのメリットについてご紹介します。

Clearbancとは

Clearbancは、カナダ版Shark Tank(シャーク・タンク) の出資者でもある投資家のミッシェル・ロマノーとアンドリュー・ドソウザによって2015年に設立された、カナダのトロントにあるベンチャーキャピタルです。投資先はEコマースに限られ、デジタル広告費への資本提供に焦点を当てています。

ローン商品とは異なり、Clearbancの前払金には返済期限はなく、時間が経つに連れて金利が上昇することもありません。Clearbancは株式ではなく、投資が返済されるまで毎月の収益の一部(1%~20%)を受け取るシステムを取っています。Clearbancの投資先の企業は、2019年末までに2,000社、投資金額は約10億ドルに上ると推定されています。

「20分タームシート」とは

Clearbancを一躍有名にしたのは「20分タームシート(※融資の主要条件などを記した条件規定書)」です。銀行やベンチャーキャピタルから融資を受けようと思えば、通常では数か月間がかかりますが、Clearbancはわずか20分間でタームシートを発行します。Clearbancは、投資を申し込んだ企業のFacebook広告の支出や資産、支払処理などのデータを分析し、アルゴリズムによって投資先としてふさわしいかどうかを判断します。

タームシートを受け取ることができれば、自動的に資金が提供されるわけではありません。商品やサービス、ビジネスモデルなど、事業内容を調査するデューデリジェンスを 受け、銀行口座と広告データをClearbancのプラットフォームに接続します。約5日~7日でこの手続きが完了すると、すぐに資金を受け取ることができます。

Clearbancを利用できるのはどのような企業か

Clearbancの投資を受けるためには、北米に拠点を置くEコマーススタートアップで、月次収益が10,000ドル以上、最低でも6か月間の安定した収益を得ていることが条件となります。また、月次収益から手数料を徴収することに加え、資金の使用目的に応じて、6%~12.5%の定額利用料がかかります。Clearbancから得た資金をすべて、FacebookやGoogleなどの広告費に費やす場合は、資金の6%が利用料となります。たとえば、広告費として10万ドルの融資を受けた場合、Clearbancに返済する額は10万6千ドルとなります。反面、広告以外にお金を使用する場合は、手数料は最大12.5%にまで上る可能性があります。

 

Clearbancは「融資」ではなく「前払金」

Clearbancは、企業に投下した資金のことを「融資」ではなく、「前払金」と呼びます。というのも、前払金には返済期限がなく、金利が変わることもないからです。Clearbancは企業が前払金を返済し終えるまで、月次総収益の1%から20%を受け取ります。

創業者のロマノーは、スタートアップの起業家が、自らの信用と生計を賭けてビジネス資金を作ろうとすることを好ましくないと考えており、Clearbancを従来の貸金業として設立したくないと考えています。しかし、景気が後退するなど、企業が前払金を払えなくなった場合、Clearbancは大きなリスクを抱えることになります。

資金提供にとどまらないClearbancのメリット

Clearbancの資金を受けた企業は、ClearbancのWebサイトで紹介され、パネルディスカッションや業界のディナーに招待されることによってブランド価値が上昇し、資金以外にもサポートを受けることができたと語っています。また、FacebookやGoogle広告以外にも様々なデジタル広告プラットフォームが企画する実験的なプログラムに、無料で参加することができます。

まとめ

DTCのEコマースにとって、顧客獲得のためのデジタル広告は非常に重要な反面、負担は大きくなっています。
厳しい状況にあるスタートアップにとって、Clearbancの20分タームシートを通じての融資は、大きな助けになります。また、資金提供以外にも、Clearbancのサポートを受けることによって、ブランド価値が高まるなどのメリットも得られます。

著者: Ami.T

在米15年。長らくトランスコスモスでのコールセンター事業運用に従事し、コールセンターの立ち上げや顧客管理業務を専門的に担当してきました。現在は営業として、日系企業が米国市場に進出する際のサポートを提供しています。米国市場は複雑で競争が激しいため、市場調査、販売戦略の開発、ローカルパートナーシップの構築など、包括的なサポートを行っています。

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